3Dプリンターと歯科技工士はどっちの方が精度が高い?

歯を治療するときに補綴物(詰め物や被せ物)を入れたことがある方は多いと思います。その補綴物を製作するのは主に歯科技工士ですが、近年では3Dプリンターを使用することも多くなっています。では、歯科技工士と3Dプリンターでは、どちらが制度の高い補綴物を制作できるのでしょうか。

3Dプリンター

3Dプリンターとは

3Dプリンターとは、3DCADというコンピュータの設計ソフトによって設計された物体をつくり出すことができるシステムです。例えばネジなどを設計すれば、3Dプリンターが材料を積層、または切削して完成させていくのです。現在では、技術が進歩して、さまざまなものに応用されていて、歯科の補綴物製作にも多く使用されています。歯科では自費診療による需要が多かったのですが、現在では条件付きで保険適用にもなっています。大きなメリットとしては、人が介在しないため、コストダウンが図れることと、制作スピードのアップです。特に製作スピードは技工所に依頼すれば数日かかる場合もありますが、3Dプリンターでは1時間あまりで製作することも可能。患者さんに即日装着できます。

3Dプリンターの精度

3Dプリンターの精度については、各種の議論があるところです。もちろん、保険適用もされていますので、十分な精度は確保されていますが、メーカーによって格差もあります。
口腔内をスキャンして、そのデータをコンピュータが解析して補綴物を3Dプリンターが出力しますので、すべてデジタルで完結し、精度は高いです。ただ、人間の口の中は以上に繊細に出来ていますので、完璧に製作したとしても、多少の誤差は出てきます。
もちろん、補綴物を装着後に歯科医師が削るなどの調整をすれば問題はないのですが、微妙な違和感を感じる可能性もあるようです。

歯科技工士

歯科技工士とは

歯科技工士とは、科医師の指示書にしたがって、入れ歯、歯の被せ物、歯の詰め物、矯正装置などの作成や加工、修理を行う職業のことです。一般的には歯科技工士の専門学校で学び、国家試験を受けて歯科技工士となります。歯科技工所という補綴物などを製作する企業で働くことが一般的ですが、個人で仕事を請け負っている人も多数います。
また、近年では、歯科クリニック内に歯科技工所が有り、患者さんの歯型を取ったら、すぐに製作ができる体制を取っている場合もあります。歯科技工士に依頼する大きなメリットは、3Dプリンターにはできない、臨機応変な製作が出来ることにあるでしょう。

歯科技工士の精度

歯科技工士の精度では、ある一定のレベルが確保されています。それは、歯科技工士が国家資格であるからです。実習などの経験を積み、歯科技工の知識を学んでから国家試験を受けていますので、どこの技工所でも一定の品質は保たれています。ただ、技工士や技工所での得手、不得手はあるようです。3Dプリンターと比較して精度はどうかというのは、前述のように議論があるところですが、基本的には歯科技工士のほうが、しっくりとくる患者さんが多いのではないでしょうか。
しかし、歯科医療は精度だけではありません。費用面やスピードでは3Dプリンターが勝りますので、うまく両者を活用することが重要です。

まとめ

ご紹介してきたように、3Dプリンターと歯科技工士では、さまざまな意見がありますが、歯科技工士のほうが精度が高いと思われます。しかし、費用面やコスト面の問題もあるので、両者を適宜使い分けていくことが重要です。

【造形方式別】歯科用3Dプリンター一覧

歯科用3Dプリンターには大きく3つの造形方式があります。大型模型を造形しやすいが造形速度は遅い「SLA方式」、スピードとメンテナンス性が良いが導入コストが高めである「DLP方式」、初期費用が安価な分、ランニングコストが高くメンテナンス性が低い「LCD方式」、それぞれにメリット・デメリットがあります。メリット・デメリットをしっかり把握したうえで、自院にとって最もメリットが大きい形式を選びましょう。

幅広く早く造形したい
歯科医院や技工所向け
DLP

DLP対応の
⻭科⽤3Dプリンター
販売会社

大型の光造形出力をしたい
歯科医院や技工所向け
SLA

SLA対応の
⻭科⽤3Dプリンター
販売会社

歯列模型の作成など用途が
限定的な歯科医院向け
LCD

LCD対応の
⻭科⽤3Dプリンター
販売会社

DLP

プロジェクターで面照射をしていく方式。材料(レジン)に、プロジェクターを用いて面で紫外線照射をしていきます。面で造形していくため造形スピードが速く、高精細で大小幅広いサイズの造形も可能。導入費用は高いもののメンテナンスや消耗品が少なくて済むためランニングコストはあまりかかりません。

SLA

紫外線を一点照射させていく方式。レーザーポインターのように紫外線を当てて樹脂を硬化させていきます。1点集中で照射させていくためパワーを出しやすく、装置の大型化もしやすいことから、大型の光造形出力をできる利点があります。一方で、細かい造形には適しない、出力に時間を要するという特徴も。

LCD

液晶ディスプレイ(LCD パネル)でDLP方式同様に面で造形していく方式。紫外線LEDライトをバックライトとして液晶パネルに表示させ樹脂を硬化します。面で照射するため造形スピードが早く、イニシャルコストを安く抑えられますが、液晶パネルが紫外線と熱に弱いため出力品の精度が若干甘く、歯科の模型作成などを行う歯科医院向けです。また、液晶パネルを定期交換する必要があり、他の造形形式よりもランニングコストが掛かります。